私は長年、ひどい腰痛に悩まされてきました。「腹筋や背筋が弱いからだ」と言われれたこともあり、痛みに耐えながらスポーツジムで筋トレをし、結局悪化して1ヶ月ほど運動から遠ざかる。そんな悪循環を繰り返していました。整形外科に行っても「特に異常はない」と言われ、接骨院でマッサージを受けると一時的には良くなるものの、しばらくするとまた再発してしまうのです。
しかしある時、「腰が痛いのは、実は腰そのものが原因ではないのではないか?」と気づく出来事がありました。3月の入院生活で体を動かさない時期があり、体が硬くなって腰痛がひどくなりかけた時のことです。接骨院にも行けないため、自分で体を揉みほぐしてみたところ、太ももの外側の筋肉がガチガチに固まっていることに気がつきました。
そこでYouTubeを見ながらその部分を念入りにほぐしてみると、なんと腰の痛みがすっと消えたのです。それ以来、太ももの外側をマッサージしたり、家庭用の低周波治療器を当てたりするようになり、腰痛は再発しにくくなりました。痛みの原因は「腰」ではなかったのです。
実はこれ、人間の行動や心理にも凄く通じる話だと思っています。
例えば、「やればすぐに終わるのに、なぜか先延ばしにしてしまう」「一歩が踏み出せない」ということは誰にでもありますよね。何かしら自分の中で引っかかる部分があって、行動に移せない場合、その原因は「意志の弱さ」ではなく、過去のトラウマ的な経験にあったりします。 「あの時の辛い思いを二度としたくない」という無意識の防衛本能です。私の場合ですと学生時代にあれだけ就職活動で努力したのに希望した会社に入社できず、ブラック企業(1社目)に勤めて苦労した経験。あるいは、会社に入ってから学歴的なコンプレックスで目の敵にされて嫌がらせを受けた経験。自分自身を責めてしまったり、他者への恨みや辛みがあったりするのが、生身の人間というものだと思います。
私自身も56年生きてきて、その経験から痛感していますが、心に刻まれた辛い痛みを「完全に無くそう」とするのは不可能だと思っています。心に傷を追っていて、それが深かったりすると、それを無かったことにすることは難しいというのが実感です。大切なのは、「過去に辛い出来事があった」と、まずはその痛みをしっかり認めてあげること。そして、自分自身や関わった相手、その出来事自体を「許す」ことだと思います。
私が30代前半のころ、人間関係に深く悩み、非常に大きな挫折を経験したことがありました。当時の私の中には、どうしても許せない人が一人いて、今振り返ると、その思いにかなり執着してしまっていたのだと思います。
そんな苦しい時期に、長者番付で日本一になられた斎藤一人さんのご著書で、ある言葉に出会いました。 『自分を許します。○○さん(出来事でもいいです)も許します』 その本には、「辛い記憶を思い出すたびに、何度も口に出して唱えてみてください」と書かれており、私は時々思い出すたびに、その言葉を唱えるようにしました。
最初は「本当に許すことなんてできるわけがない」と思っていました。しかし、何度も繰り返しているうちに、不思議と「自分はつまらないことに拘っているのかもしれない」と客観的に気が付くようになってきたのです。そして次第に、心は驚くほど楽になっていきました。
過去の辛い記憶を無理に消し去ろうとするのではなく、その経験と共に生きていくこと。それこそが、人間としての自然な姿なのではないでしょうか。
私自身の経験からも言えることですが、その痛みと共に歩んでいくうちに、色々な行動や結果が積み重なり、やがて「過去の結果に対する解釈」が変わってきます。 私の場合、せっかく大学を卒業して入った最初の会社を33歳の時にその人間関係で辞めるという決断をしました。それから44歳で収益不動産に出会い、今度は56歳でREMAXに出会い、思いもよらずオーナーになる道を歩んでいます。
あの時の痛みや出来事があったからこそ、今の自分がいる。「もしかしたら、あの経験は今の自分にとって必要なプロセスだったのかもしれない」。そう思えるようになりながら、人は人生を歩んでいくものなのだと、今は強く感じています。
だからこそ私は、エージェントの皆さんが抱える見えない痛みを、まずは深く理解したいと思っています。気の利いたアドバイスは上手くできないかもしれません。しかし、無理に行動を強要したり、過去を否定したりするのではなく、痛みを抱えながらも一歩ずつ前に進もうとする人の横で、一緒に伴走していくことはできます。それこそが、オフィスオーナーとしての私の大切な役割のひとつだと思っています。